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「ファントム、もうあの森に入ったらダメだからね!」
「あぁ」
「だいたい、何でせっかくの旅行がここなの? 夏に来るならまだしも、こんな季節にこんな場所、寒くて外でやれる事、何もないじゃない」
「そうだな」
「そうだな。じゃないよ!」
葵君は怒り出した。葵君という感情の豊かな少年は喜怒哀楽が激しく、私の言動に過敏に反応し、機嫌を悪くしたり、怒ったりする事がよくあった。
彼がどんな態度を見せても私は愛しく思う。
しかし反面、疎ましくも思う事もあった。正にこんな時だ。
「この時期だったら、もう花の咲いてる所とかもあるのに、何でだよ!」
「何故かな。一人で来てもいいような場所だったが、突然思い出して君を連れて来たくなったんだ」
「もう! ちょっとおかしいんじゃないの? 夢で自分が死ぬ場所に来たがるなんて、んっ……!?」
私はまだまだ喋り続けそうな葵君の唇を自分の唇で塞ぐ。
私は彼を黙らせる方法をいくつか知っている。
「急に何だよぉ……」
葵君は頬を林檎のように赤くさせて大人しくなった。
★★★
私は眠っているようだ。
夢を見ていた。
葵君が私を誘う淫夢だった。
「ファントム、僕の身体の、どの場所が好き?」
全裸の葵君がベッドの上にわざと足を広げて座り、私に微笑みながら話しかけた。
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