終わりのきっかけ

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「パパなんて大っ嫌い」 お友達の恵美ちゃんがパパに言った。 今日は同じクラスの恵美ちゃんの7才のお誕生日会に呼ばれていた。 恵美ちゃんのパパは悲しそうな顔をして、恵美ちゃんの大好きなクレープを買ってきて機嫌を取る。 いいなぁとぼくは思った。 ぼくがあんなことをパパに言ったらどうなるかな。 また叩かれるのかな。 それだけならまだいいけど、きっと家の外に出されるんだろうな。 あれは嫌だったなぁ。痛いより嫌だったなぁ。 外は暗くて、怖くて、寒くて、寂しくて、お腹が空いて、眠れなくて、なにより終わりが見えなくて。 このままずっと家に入れてもらえなかったらどうしようってとってもとっても不安になったんだ。 だけど、そんな時、決まってママが扉を開けてくれるんだ。 ぼくがママと叫びそうになるのをシーって優しく止めてくれる。 「パパ寝たから、おいで。温かいクリームスープ入れてあげるからね」 ママのスープはどんなお菓子よりも好きだった。 帰り際、「またね」と右手にクレープを持ちながら言う恵美ちゃんの左手はしっかりとパパの右手を掴んでいた。 恵美ちゃんとパパはとても幸せそうだった。 恵美ちゃんはクレープを買ってもらえて、ぼくはたぶん追い出される。この違いはなんだろう。 ぼくと恵美ちゃんの違いなのか、恵美ちゃんのパパとぼくのパパの違いなのか。 考えてもわからなかった。 恵美ちゃんはパパに愛されていて、ぼくはパパに愛されない。 パパに愛されたいなぁ。
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