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お昼の出来事を思い出しながらそんなことを考えていたら、いつの間にか寝てたみたい。
パパとママのケンカの声で、いつもの朝を迎えたことに気付いた。
「だから、久しぶりの休みなんだよ、今日くらいゆっくりさせてくれよ」
「わかってるわよ、だからお母さんに頼むから、あの子を預けに行くだけ行ってって言ってるんじゃない」
「お前の都合で預けるんだからお前が行けばいいだろう」
「もういい、これからあなたの頼みは一つも聞かないから」
「わーわかったよ、行けばいいんだろ。朝からヒステリックになるなよ」
「誰のせいで・・・・・・」
耳が痛い。
そうか今日はおばあちゃんの家に行くんだな。
怒られる前に起きて着替えよう。
おばあちゃんの家までは電車で1時間くらいかかるから、ぼくにとってはちょっとした遠足気分だった。
それに久しぶりにパパとお出掛けできるのがうれしかった。
電車を待っていると、売店に行ってくるから先に乗っていなさいと言うので、先に乗り空いている席にちょこんと座った。
電車はまだ出発する気配はなかった。
人が乗って来るたびに、パパの姿を探すけどパパは来ない。
もしかしたら、このまま捨てられるんじゃないかと不安になったけど、出発ギリギリにパパが来た。
ぼくは手を振る。
パパが座る席がなくなっていたので、ぼくは席を譲る。
朝から不機嫌だったパパが、ありがとうと言って頭を撫でてくれた。
ぼくはパパに褒められた記憶がないので、そんなことがとってもうれしかった。
最近、朝のケンカが聞こえてこなくなったので、ぼくはパパとママが仲良しになったんだと思ってうれしかった。
だけど、そうじゃなかった。
パパとママの会話自体がなくなっていた。
その夜、パパを怒らせてしまった。
パパがママに怒鳴っていて、ママは泣いていた。
ママの泣き顔を初めて見たぼくは、たまらなくなって叫んでいた。
「パパなんて大っ嫌い」
本当はパパのことは好きだったけど、これで僕の方に怒りが向けばママが泣かなくて済むと思った。
ママを助けられると思った。
ぼくは、追い出される覚悟を決めた。
だけど、この家を出たのは、ぼくじゃなくて、パパの方だった。
パパはその日、出て行ってから二度とこの家に帰ることはなかった。
ぼくはとうとうパパに愛されることはなかった。
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