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物心ついた時から、侑はその男の玩具だった。男に抵抗して暴れれば、気を失うまで折檻される。泣けば、男の執拗な行為がいつまでも続く。
今いる部屋と、客を取るときに連れて行かれる茶屋の一室。その二つが侑の世界の全てだった。
その夜も、侑は男の興を削がないよう、微かな喘ぎ声を漏らしながら、仰向けのまま格子越しに朧に光る月を見ていた。
夜も大分更けてきたようだ。男はようやく身体を離すと、耳元で囁いた。
「湯屋に行こうか」
侑は黙って頷いた。
夜はもちろん、昼間も部屋の外に出ることは許されなかったから、侑の肌は磁器のように細やかで透き通るように白かった。男の趣味で、女のような薄絹を纏った侑を、皆が振り返って見つめている。
男は湯屋でもほかの客に分からないよう、巧みに侑を弄んだ。声を殺して身体を震わせている侑を冷たい目で見つめている。もう少し手元に置いて楽しみたい気もするが、そろそろ手放す潮時だろう・・・。
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