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そんな高校生活もやがて終わりを告げ、社会人になって十数年。
私は結婚して、主人と実家の裏のゲームセンターを訪れました。
「ゼビウスあるやん!」
主人は、そう言って1回50円のアーケードゲームの席に着き、50円玉を入れました。
「ゼビウスとか、家にあるし」
「はあ? 持っとうと?」
「ファミコンやけど、昔っから持っとうよ」
ゼビウスは、父が1983年リリースされた家庭用ゲーム機ファミリーコンピューターを購入直後から買いそろえていたソフトの一つでした。
ファミコン好きの父のお陰で物心着いた頃から、ファミコンをする事が出来る環境にあった私には特にありがたみのない遊び道具だったゼビウスに夫は目を輝かせて言いました。
「俺、持っとらんやったけん。持っとう友達から一時期借りてやってた事もあったけど、全クリ出来るほど借りれなくて、ゲーセンで頑張ったけど、結局出来ず仕舞いだった」
「じゃぁ、家に持って帰って、ゆっくりやろう。ねえ、中古ソフトで誕生日プレゼントに『ミスタードリラー』買って欲しいな」
「お前の誕生日来月だろ?」
「前借り、駄目?」
「そうだな……。ってか、いっそ、後もう一台テレビも買わないかんちゃない?」
苦笑いする夫に、私は心の中で『似た者夫婦だね』と呟いた。
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