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あの宝探しの約束から、10年がたって、あたしは20才になった。そして宝探しをした場所に立っている。
10年前に引っ越してから、ここを訪れる機会はなかったから、本当に久しぶりだ。町並みはだいぶ変わっていたけれど、この場所だけは変わっていなくて、それがなんだか嬉しかった。あいつにはあれ以来連絡をとっていない。住所も電話番号も知らなかったから。いつも遊ぶのが当たり前で、会えなくなるなんて思わなかったから。
「懐かしいな・・・ほんとにここだけは変わってないんだ。」
「あぁ。変わらなかったよ。」
1人ごとを呟いたつもりだったのに、予想外に返事が返ってきて驚いて振り向くと、1人の男の人がいた。
「帰ってきてるって噂聞いてな。会える確証はなかったが、来るだろうと思ってな。」
そう言うと、ジーパンのポケットに手をいれ、びいだまを取り出して微笑んだ。
「覚えててくれてたの?・・・っていうより・・・ずっと持っててくれてたの?」
「覚えてるし、無くすわけないだろ。お前の宝物なんだから。手出せよ。」
言われた通りに片手を出すと、あたしの手にびいだまを渡し、ぎゅっと握らせた。
「ありがとう。」
「礼なんかいいんだよ。もともとお前のなんだから。それよりやろうぜ。宝探し。」
「え?」
「負けたままは嫌なんだろ?まあどこに隠したって見つけるけどな。」
そう言って不敵に笑う顔は、あの時と変わっていなかった。
「その顔、昔のまんま。」
「うるさい。ルールは同じだ。いいな?」
「うん。いいよ。」
相手があたしに背を向けたのを確認すると、 びいだまを隠すために、あたしは後ろにある森の中に入った。
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