◆ちょっと通して 下しゃんせ

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 薄暗い山道を、俺は駆けている。  背後からは得体の知れないモノが、俺を捕まえようと追いかけて来る。  振り返ってはいけない。  見てはいけない。  あれに捕まったら、終わりだ。  息があがって、足がもつれる。  それでも、走るのをやめる訳にはいかない。止まったら、あれに捕まってしまう。  捕まってしまったら、俺は二度と逃げられない。  どこまで続くか分からない山道を、必死になって走って行く。  眠ったのか眠っていないのか、良く分からないまま、すっきりしない頭でモーニングコールで目が覚めた。  嫌な──とても嫌な夢を見ていた気がする。が、内容は目覚めた途端に記憶からこぼれ落ちていき、ほとんど残っていない。  思い出そうとする程に、記憶は曖昧になっていくようだ。  俺は時計を見て時間を確認すると、頭を振ってベッドから立ち上がった。思い出せない事に気を取られて、出発の時間に遅れる訳にはいかない。
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