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薄暗い山道を、俺は駆けている。
背後からは得体の知れないモノが、俺を捕まえようと追いかけて来る。
振り返ってはいけない。
見てはいけない。
あれに捕まったら、終わりだ。
息があがって、足がもつれる。
それでも、走るのをやめる訳にはいかない。止まったら、あれに捕まってしまう。
捕まってしまったら、俺は二度と逃げられない。
どこまで続くか分からない山道を、必死になって走って行く。
眠ったのか眠っていないのか、良く分からないまま、すっきりしない頭でモーニングコールで目が覚めた。
嫌な──とても嫌な夢を見ていた気がする。が、内容は目覚めた途端に記憶からこぼれ落ちていき、ほとんど残っていない。
思い出そうとする程に、記憶は曖昧になっていくようだ。
俺は時計を見て時間を確認すると、頭を振ってベッドから立ち上がった。思い出せない事に気を取られて、出発の時間に遅れる訳にはいかない。
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