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やす吉は男性の方を呼び、そのアイディアに従って男女を別れ道まで連れて行った。
分かれ道には道しるべはなく、どちらが『死後の国』への道か男女には全くわからない。
「ゴメン香奈枝、僕が生き返る選択をして…」
「ううん、いいの、元々私が死ぬ予定だったんだから」
やす吉は女性の方である優太に向かって言った。
「ほな、あんさんはこっちの道を進んでくれまっか」
「じゃあ…」
「うん」
恋人たちの永遠の別れにしてはあっけないが、現実はそんなものかもしれない。
歩いていく後ろ姿に向かって、男性の方が大声で呼びかけた。
「生き返ったら幸せになってねー」
女性の方は振り返って答えた。
「わかったー」
だが心の中ではこう思っていた。
(生き返るのは君の方だ、僕の分まで幸せになってくれよ)
女性の方が見えなくなるまで二人は見送った。
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