死後の国への分かれ道

9/13
前へ
/13ページ
次へ
やす吉はしゃがみこんで嘆いた。 「わてはどっちを連れて行ったらええんや?」 すかさず女性の方が言った。 「それは僕、いや私よ、だってどう見たって香奈枝はこっちでしょ」 「何言ってるの、香奈枝は私よ」 二人の思いは一緒だった。(相手を生き返らせてあげたい) 「事故を起こしたのは僕なのに、何で君が死ななきゃいけないんだ」 「私が死ぬ運命だったのよ、どうして優太が死ぬ必要があるの?」 二人の口論はどんどんエスカレートして興奮状態はピークに達した。 「なんで僕の言うことが聞けないんだ!」 「ちょっと、それって横暴じゃない!」 そう言った男性の方が突然ポロポロと涙を流し始めた。 やす吉が言った。 「男は泣いたらあかんがな」 「グス、私は女なの!」 「そうやった、あ~もう、ややこしいなあ」 女性の方が静かに言った。 「どうしたんだ、香奈枝?」 「私たち、まだ一回もケンカなんかしたことなかったのに…」 二人は言い争いを終わらせるしかなかった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加