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やす吉はしゃがみこんで嘆いた。
「わてはどっちを連れて行ったらええんや?」
すかさず女性の方が言った。
「それは僕、いや私よ、だってどう見たって香奈枝はこっちでしょ」
「何言ってるの、香奈枝は私よ」
二人の思いは一緒だった。(相手を生き返らせてあげたい)
「事故を起こしたのは僕なのに、何で君が死ななきゃいけないんだ」
「私が死ぬ運命だったのよ、どうして優太が死ぬ必要があるの?」
二人の口論はどんどんエスカレートして興奮状態はピークに達した。
「なんで僕の言うことが聞けないんだ!」
「ちょっと、それって横暴じゃない!」
そう言った男性の方が突然ポロポロと涙を流し始めた。
やす吉が言った。
「男は泣いたらあかんがな」
「グス、私は女なの!」
「そうやった、あ~もう、ややこしいなあ」
女性の方が静かに言った。
「どうしたんだ、香奈枝?」
「私たち、まだ一回もケンカなんかしたことなかったのに…」
二人は言い争いを終わらせるしかなかった。
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