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<オマケ>
「小宮」
「なんですか」
「小宮」
「だからなんですか」
「仕事しにくい」
「そうですか、じゃあ」
小宮は大野の口をふさいでいた手をはずすと、養生テープを手でさいて、大野の口にはった。
「そのままにしてくださいね、大野さん誰に恋愛されてるかわからないんでキス予防です」
「……」
「キスキス・スキス菌の流行おさまるまでとにかく守ってくださいね、唇」
べりりとテープをはずし、大野は喜々として思いついたことを言った。
「なあ、ハメハメ・スキス菌だったらどうする?」
「は?」
「ハメないと死んじまうんだぜ?てかそれお前か~お前、俺に言ったもんね『セックスするのと死ぬのと、どっちがいいですか』って」
小宮は片眉がぴくりとするが、顔をあげず目線はPC画面から動かない。
「なあ、どうする?俺の事好きで好きでたまんない子が、ハメハメ・スキス菌に感染して『ハメないと死にます~お願いします~』、なんつって」
「……やです」
「やです、ったって、ヤんないと死ぬんだぜ?一回くらいはいいじゃん。見殺しにするのか、カワイソー」
「だ、め、で、す!」
小宮の目は三角になっていた。
大野の鼻の下がのびる。
かわいい。なんてかわいい反応。
もっといぢめたいな、でもこれ以上、いぢめると泣くかな。見たいな泣き顔。
「大野さん」
「んー?」
小宮は、大野の耳元でささやいた。
「これ以上僕のことからかうと、今夜ひいひい言わしますから」
小宮は大野にキスをする。
「んんんんっ」
「大野さんは、僕以外とキスもセックスも絶対禁止」
言うとまた口づける。
「んんんんっ」
「相手が死んでも」
「んんんんんんんんっ」
小宮はまたPCに向かう。それじゃあしょうがなし、とおとなしく養生テープを口にはりなおし、喜々として仕事を再開した。
キスキス・スキス菌。
そもそもこいつ以外から惚れられるとかねえし。
笑うとテープがとれそうになる。
小宮は、しょうがない人ですね、といって、それをはがし、もう一度キスした。
「就業中ですけど」
「それがなにか」
見回すと、オフィスのいたるところでキスがくりひろげられている。
キスキス・スキス菌。
今日はたぶん仕事にならない。
(オマケオワリ)
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