七瀬へ

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「おい、翼、おまえ三年になったら、選択科目何にするんだ?」 同じ陸上部の和博(かずひろ)が話しかけてきた。 二年生の三学期、まだ冷え冷えとするうす暗い道を、並びながら自転車をこぐ。 「あー、俺、日本史と地学」 「地学?」 和博が間抜けな声をあげる。 「計算もないし、生物ほど暗記をしなくていい。文系志望でセンター試験だけならそっちの方がいいって担任から言われた。おまえは?」 「オレ? 理科は化学と生物。社会は悩み中」 「理科が二つ? 和博の進路って何?」 部活のことだけで精一杯で、一年の時からの付き合いでも、和博が何を目指しているのか全く知らなかった。 「俺さ、看護師を目指そうと思って」 思いもしない和博の言葉に驚いた。
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