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「宮下さんって、いいよな」
5月に入った頃、和博が突然言い出す。
その言葉に同意も、否定もせず、黙って聞いていた。
窓際で寄りかかりながら、和博は口元を緩めた。細い目を糸目のようにして話し出す。
和博の顔を見たくなくて、外に目を向けた。
空には、優しくて、頼もしい色が広がる。
ゆらゆらと引き伸ばされ、どんどんと形を変えていく雲が、自分の気持ちのざわつきを知らせる様だった。
「いつも控えめで、にこにこしてて、見てると癒されるよな~」
教室の隅にいる七瀬に目線を送る。
確かに七瀬は笑顔でいることが多かった。
けれど、目が笑っていない、なぜかいつもそう感じていた。
「にこにこか……」
「そうそう、たまに話しかけると、小さく首をかしげて、何?って顔で見つめ返してくれるんだ。もう、最高!」
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