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和博は、おおはしゃぎで七瀬の良さを延々と話す。
でも、そんな姿を知れば知るほど、今まで手紙で繋がってきた七瀬が消えていくようだった。
「でさ、彼女頭いいだろう? オレ、数学で分からないところをさっき教えてもらったんだ!」
数学の問題が書かれたルーズリーフをわざわざ自慢げに見せた。
小さく丸く、女の子らしい字。
見ると、息苦しくなって、なぜか苛立ちを覚えた。
「俺、あの子、苦手……」
「えー、あんなに可愛いのに!?」
ぶっきらぼうに答えると、教室を出ていった。
ルーズリーフの字から、手紙のやりとりさえ、全くなかったのだと七瀬から伝えられた気がした。
馬鹿みたいだ。
小さな子供みたいに、いつまでも相手が自分の思い通りでいてほしかった。
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