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夏休みに入って、学園祭の準備が始まった。
次から次へと準備がなだれ込んでくる。朝から練習や作業に追われ、夜は受験勉強。
時折、勉強時間が足りてないんじゃないかと不安になるのに、それを誰も声を大にして言わない。
学園祭までの我慢だと言い聞かせているのか、その後の味気ない日々を潤すための思い出つくりなのか、学園祭という小さな空間に自分たちのすべてをぶつけるかのようだった。
そして、進路が同じという連帯感と学園祭前の盛り上がった雰囲気によって、和博はクラスメイトの沙織(さおり)と付き合いだした。
「ね、美谷君、ダンスアピールの衣装、こんなのでどう?」
沙織から見せられた学園祭の衣装は、真っ赤な服とバスタオルよりも大きな白い布だった。
「入場の時はこの布を巻いて着ている服が見えないようにして、曲のテンポが変わったら、布をとって踊り出そうかと思って」
布を手に取ると、あまりにも薄く、どことなく頼りなかった。
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