6人が本棚に入れています
本棚に追加
一体、この子に何を書けっていうんだよ……。
せめて男か女かが分かれば、話すことも変えられるのに。
そう考えながらも、手紙を書くときは、絶対に『僕』は使わないと決めていた。
『僕』という言葉は、なんとなく子どもっぽい。
最近は自分のことを「俺」って言うようになっていたけれど、手紙に書いてみると、慣れていないせいか、ものすごく変な感じがした。
確か、大人は、男でも「私」を使うって、お父さんが言ってたな。
背伸びしたい気持ちが出てきた。知らない相手だからこそ、少しでも良く見られたかったのかもしれない。
『はじめまして。わたしは、美谷 翼(みたに つばさ)です。』
僕は自己紹介の文章を出来るだけ丁寧な字で綴った。
二週間ほど経って、返事が先生から手渡された。
自分の書いたものが見知らぬ誰かの元に届き、返事がもらえることになぜか心が躍った。
最初のコメントを投稿しよう!