七瀬へ

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一体、この子に何を書けっていうんだよ……。 せめて男か女かが分かれば、話すことも変えられるのに。 そう考えながらも、手紙を書くときは、絶対に『僕』は使わないと決めていた。 『僕』という言葉は、なんとなく子どもっぽい。 最近は自分のことを「俺」って言うようになっていたけれど、手紙に書いてみると、慣れていないせいか、ものすごく変な感じがした。 確か、大人は、男でも「私」を使うって、お父さんが言ってたな。 背伸びしたい気持ちが出てきた。知らない相手だからこそ、少しでも良く見られたかったのかもしれない。 『はじめまして。わたしは、美谷 翼(みたに つばさ)です。』 僕は自己紹介の文章を出来るだけ丁寧な字で綴った。 二週間ほど経って、返事が先生から手渡された。 自分の書いたものが見知らぬ誰かの元に届き、返事がもらえることになぜか心が躍った。
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