七瀬へ

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それから、一ヶ月に一、二回ほど手紙がお互いの家を行き来する。 手紙が来るのが、次第に待ち遠しくなった。 七瀬はいろんなゲームの情報や学校のことなどを面白おかしく伝えてくれて、お互い話題は尽きない。 手紙をもらうのも書くのも楽しい、ただそれだけで良かった。 僕はずっと、「わたし」を使い続けた。 中学に入ると、部活や勉強で忙しくなっていく。 そんな毎日で手紙を待ちわびることはなくなったが、それでも届くことは嬉しくて、少し時間が出来ると、自分から返事を出した。 一年があっという間に過ぎて、二年生になり、七瀬からの手紙の字が突然変わった。 『今、こんな丸文字を書くのがクラスではやってるよ。がんばって練習しているけれど、難しい。こんな風に学校では色んな子のまねをしないといけないから、疲れちゃう。つばさちゃんは女の子と一緒にいて、そんなことない?』 練習しているといった字は、小さくて、丸みがあって女の子らしい。 けれど、その字から元気がないことが嫌でも伝わってきた。
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