1階~10階

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ドアを開けると、そこは確かにちょっとダンジョンぽかった。 だが、ツッコミどころが多すぎた。 まず目に入ったのは、部屋の隅にある漬け物樽だ。 「絶対触るな」という貼り紙と、近づけないようにテープのバリケードがあった。 漬け物石が若干カイの服やアクセサリーに似た装飾がされているが、気のせいだろう。 「カイじゃないよ」って貼り紙もしてあるし。 続いて目に入るのはたくさんの宝箱だ。これも貼り紙がしてある。 「10階をクリアするまで開けないでね」「20階をクリアするまで開けないでね」etc... まさか、こうやってセルフで60階分あるかのように攻略していけということか。 一応鍵はかかっているみたいだ。それに、手が届かないような高い棚にも宝箱がある。 次に、部屋の奥のほうに「絶対入るな」と書かれたドアが見えた。 貼り紙の下にある「WC」の文字が透けてみえるから、100%トイレだ。 他には一般的な家具類が置いてあるくらいだ。 ダンジョンに家具があるのももちろん変なのだが。 「さて、どこから攻略を始めればいいんだ?」 そこで、天井にあるスピーカーから音楽が流れ始めた。続いて声も聞こえる。 「勇者ギルよ。よく来たな」 ……スピーカーから流れてくるのはいいけど、トイレからも同じ声が聞こえる。ある意味ステレオだ。 どうやらドルアーガはトイレから実況するつもりらしい。 「扉の方を見るな。後ろにある私の分身を見ろ」 振り向くと、ドルアーガのぬいぐるみが置いてあった。 「それがしゃべっていると思え」 思えって。僕次第かよ。 「おい!ぬいぐるみだと思って甘く見るなよ」 なんとそこでぬいぐるみが声にあわせて動いた。 「こいつ、動くぞ!」 「ハッハッハ、驚いたか」 しかし、よくよく見てみると、ぬいぐるみの置いてある箱が不自然に大きい。 ぬいぐるみをつかんで引っ張ってみると、お尻に棒がついていて箱の中につながっていた。 「それ以上引っ張るとゲームオーバーだ。やめろ」 ドルアーガが震えた声で言った。 「わかった。僕もそこまで非情ではない。だがしかし……」 ギルには気になることがあった。 「ドルアーガはトイレにいる。カイは石にされている。  じゃあこれを動かしているのは誰だろう。モンスターもいないようだし」 ギルは少しの間考えて、ふと思いついたことを口にした。 「……イシター様?」 ぬいぐるみは沈黙した。
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