6人が本棚に入れています
本棚に追加
ドアを開けると、そこは確かにちょっとダンジョンぽかった。
だが、ツッコミどころが多すぎた。
まず目に入ったのは、部屋の隅にある漬け物樽だ。
「絶対触るな」という貼り紙と、近づけないようにテープのバリケードがあった。
漬け物石が若干カイの服やアクセサリーに似た装飾がされているが、気のせいだろう。
「カイじゃないよ」って貼り紙もしてあるし。
続いて目に入るのはたくさんの宝箱だ。これも貼り紙がしてある。
「10階をクリアするまで開けないでね」「20階をクリアするまで開けないでね」etc...
まさか、こうやってセルフで60階分あるかのように攻略していけということか。
一応鍵はかかっているみたいだ。それに、手が届かないような高い棚にも宝箱がある。
次に、部屋の奥のほうに「絶対入るな」と書かれたドアが見えた。
貼り紙の下にある「WC」の文字が透けてみえるから、100%トイレだ。
他には一般的な家具類が置いてあるくらいだ。
ダンジョンに家具があるのももちろん変なのだが。
「さて、どこから攻略を始めればいいんだ?」
そこで、天井にあるスピーカーから音楽が流れ始めた。続いて声も聞こえる。
「勇者ギルよ。よく来たな」
……スピーカーから流れてくるのはいいけど、トイレからも同じ声が聞こえる。ある意味ステレオだ。
どうやらドルアーガはトイレから実況するつもりらしい。
「扉の方を見るな。後ろにある私の分身を見ろ」
振り向くと、ドルアーガのぬいぐるみが置いてあった。
「それがしゃべっていると思え」
思えって。僕次第かよ。
「おい!ぬいぐるみだと思って甘く見るなよ」
なんとそこでぬいぐるみが声にあわせて動いた。
「こいつ、動くぞ!」
「ハッハッハ、驚いたか」
しかし、よくよく見てみると、ぬいぐるみの置いてある箱が不自然に大きい。
ぬいぐるみをつかんで引っ張ってみると、お尻に棒がついていて箱の中につながっていた。
「それ以上引っ張るとゲームオーバーだ。やめろ」
ドルアーガが震えた声で言った。
「わかった。僕もそこまで非情ではない。だがしかし……」
ギルには気になることがあった。
「ドルアーガはトイレにいる。カイは石にされている。
じゃあこれを動かしているのは誰だろう。モンスターもいないようだし」
ギルは少しの間考えて、ふと思いついたことを口にした。
「……イシター様?」
ぬいぐるみは沈黙した。
最初のコメントを投稿しよう!