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「1階から10階は“力の試練”を行ってもらう」
「試練?僕の知ってる塔のシステムと違うぞ」
「黙れ黙れい。この塔は今までになかった新しい塔、概念の塔とでも呼ぼうか」
「概念の塔?」
「試練に打ち勝つたび、お前は1つ、強さの階段を登るのだ。
カイを助けたあと、もしかしたら大人の階段も登れるかもしれないぞ」
「下らない」
「その通り、下らないから、登りつづけるのだ。では1階の試練を発表する」
この一瞬だけはさすがのギルも少し緊張した。
「そこの椅子を壁の線に沿って動かせ」
ギルは、とりあえず言われた通りにした。
「クリアー」
スピーカーから拍手のSEが流れ、ぬいぐるみがうれしそうに踊った。
「いやいや!これだけかよ!」
「滾るな、若人よ。まだ1階ゆえ小手調べといったところだ」
「な、なるほど……」
「2階の試練!ちゃぶ台を指定された枠に置け!」
こうして、ギルは言われるがまま茶ダンス、本棚、冷蔵庫などを動かしつづけた。
「ずいぶん片付いてきたな」
ドルアーガが満足そうに言った。
「おい!力の試練とか言って片付けさせてるだけじゃねえか!」
たまらずギルは叫んだ。
「甘い。これは片付けではない。模様替えという儀式だ」
「ちくしょう、お洒落のためじゃしょうがねえ」
「それによく見てみろ。動かしたものの後ろの壁に、キーワードが書いてある」
「本当だ。これが宝箱を開ける鍵になるのか」
「そういうことだ。まあシミがうまいこと文字に見えたから利用しただけだけど」
ギルは聞かなかったことにした。
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