1階~10階

4/5
前へ
/39ページ
次へ
「1階から10階は“力の試練”を行ってもらう」 「試練?僕の知ってる塔のシステムと違うぞ」 「黙れ黙れい。この塔は今までになかった新しい塔、概念の塔とでも呼ぼうか」 「概念の塔?」 「試練に打ち勝つたび、お前は1つ、強さの階段を登るのだ。  カイを助けたあと、もしかしたら大人の階段も登れるかもしれないぞ」 「下らない」 「その通り、下らないから、登りつづけるのだ。では1階の試練を発表する」 この一瞬だけはさすがのギルも少し緊張した。 「そこの椅子を壁の線に沿って動かせ」 ギルは、とりあえず言われた通りにした。 「クリアー」 スピーカーから拍手のSEが流れ、ぬいぐるみがうれしそうに踊った。 「いやいや!これだけかよ!」 「滾るな、若人よ。まだ1階ゆえ小手調べといったところだ」 「な、なるほど……」 「2階の試練!ちゃぶ台を指定された枠に置け!」 こうして、ギルは言われるがまま茶ダンス、本棚、冷蔵庫などを動かしつづけた。 「ずいぶん片付いてきたな」 ドルアーガが満足そうに言った。 「おい!力の試練とか言って片付けさせてるだけじゃねえか!」 たまらずギルは叫んだ。 「甘い。これは片付けではない。模様替えという儀式だ」 「ちくしょう、お洒落のためじゃしょうがねえ」 「それによく見てみろ。動かしたものの後ろの壁に、キーワードが書いてある」 「本当だ。これが宝箱を開ける鍵になるのか」 「そういうことだ。まあシミがうまいこと文字に見えたから利用しただけだけど」 ギルは聞かなかったことにした。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加