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「いやあああ!!」
心地良い悲鳴が俺の耳朶を打つ。
雑音をかき消す雨の中を逃げ惑う女性。
俺はわざと一定の距離を保って女性を追いかける。
「だ、誰か・・・・・・誰か助けて!!」
女性がどれだけ声を出しても、土砂降りの雨が原因で道路に人の姿はまるでなかった。
(もっと足掻け、足掻いて俺を楽しませろ!)
悲鳴をあげる体力がなくなるまで、じっくりいたぶっている感じが狩りを思わせ、どうしようもなく心を高ぶらせる。
・・・・・・名も知らない女性の命を懸けた追いかけっこは、ほどなくして終わりを迎えた。
「はあっ、はぁっ・・・・・・く、うぅ・・・・・・」
転んだ姿勢のまま、肩で息をするのが精一杯で、もう悲鳴をあげることが出来なくなった獲物に用はない。
「ありがとう」
「ひっ・・・・・・!」
振り返った女性の顔は涙と泥で汚れひどいものだった。
俺はここまで楽しませてくれた感謝の気持ちでナイフを振るい、女性の返り血を浴びながら今宵最後の恍惚を味わった。
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