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春。
桜が満開に咲き誇るこの季節、
私橘 美桜は私立桜ヶ丘高等学校に入学した。
校門まで続く長い長い桜並木はこの学園の名物でもある。
……本当に長い。
果てしなく。
「美桜!
おはよっ」
校門までの長い道のりにうんざりした頃、
後ろからポンッと肩を叩かれた。
「あ、綾那。
おはよー」
「おはよっ
今日空くんは?
一緒じゃないの?」
「起きないから置いてきた」
「あはは、
空くん朝弱いもんね」
「うん。
いい加減自分で起きろっつーの」
彼女は右京綾那。
小学校からの付き合いで面倒くさがり屋の私によく構ってくれる優しい女の子。
私なんかよりずっと女子力高い。
黒髪の長いストレートに切れ長な瞳、
すらっと背の高い長身、
ふわっと香る嫌味のない香水の匂い。
私が男だったら絶対惚れてる。
そして綾那が口にした空くん、
というのは私の隣の家に住む幼馴染だ。
無愛想で、
女嫌いな我が幼馴染。
唯一の取り柄はギターがプロ並みに上手い。
ただそれだけ。
多分、
ギターがないと生きていけないだろう。
本当に。
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