たいせつ

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秘密結社“日輪”首領・旭は、同じく秘密結社であり、大犯罪組織と名高い“天華団”との抗争に手をやいていた。 そんな中で旭は、自ら現場に出て、天華団の動きを追っていた。 証拠をほとんど残さない彼らに対抗するために、旭は自身の特殊能力を生かした捜査を行っていた。 その捜査スタイルを、旭は“残留捜査”と呼んでいた。 “残留捜査”とは、人間が死に際に発した気――空間に刻み付けられたその念と波長を合わせて情報を読み取ったり、精霊や亡霊など霊的なものと交信するなどして捜査を進めることを言う。 犯罪者の捕縛など目的を果たすために残留捜査を行うことが主であるが、扱う事件が特にない時は、残留捜査から事件性のある情報を見出だしてそれを解決することも、旭の仕事の一つだった。 その日、旭は後者のスタイルで残留捜査を行っていた。 霊的なものから得た情報によれば、他人の記憶や人格を真似、その地位を奪う者、“かわりみ”と呼ばれる者達が暗躍しているとのことだった。 “かわりみ”の中には、政府要人になりすまし国政を動かしている者もいるという。 霊的なもののなかに“かわりみ”の協力者がいる可能性があり、そのため、残留捜査でなければ感知できない事件だろうと“彼ら”は言った。 殺しや人の死に直結するような事件ではなかったが、旭は胸騒ぎを覚えたので、本格的に捜査にのりだすことにした。 政府の暗部を正すことを至上目的としていた旭は、日輪の部下たちにはその目的をふせて、自ら捜査にあたった。
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