たいせつ

4/9
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「旭様、どちらへ行かれていたのですか?」 中へ入るなり、そう言って秘書の鹿野が駆け寄ってきた。 「少し気になることがあって、情報収集をしてきたの」 「なら、言ってくだされば同行しましたのに」 「そこまで大事じゃなかったから…」 「大事でないことなんてないんですよ。あなた様がお一人で動くことは、猛獣が数多住むサバンナを一人行くような危険を伴うことなんです。そうやって殺されていった先帝たちがどれだけいるか…」 「悪かったと思っているわ。だけど、私は本当にそんな身分の人間なの?」 「そうです。あなた様は皆が頭を垂れるべき高貴なお方。だれに頭を垂れることもしてはなりません」 「私はそんなことは望まないわ。望む望まないにかかわらずそうなってしまうって斎もあなたも言うけれど、それじゃあ、逆に気をつかってしまってお互いのためにならないわ。私は、皆とわいわい楽しくやりたいのに。もちろん仕事は真面目にやるけれど」 「ご要望ならばそうすることも可能ですが…」 「そういうことじゃないのよ…」 旭はそう言ってうなだれるようにした後、とぼとぼと自室へかえる。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!