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『あのね?絶対ぜったい!誰にも内緒にしておいて欲しいんだけど…』
バイトが休みで、二人で遊びに出かけた、とある週末。
茉奈が必死な顔して、そう言いだした時、何となくゾクリ…嫌な予感がした。
『瑞希のこと信用してるから、言うんだけど…』
『あ、うん、何?』
たずねながらも、聞くのが怖かった。相手から視線をそらす。
言い淀みつつ、だけど茉奈が〝そのこと〟を、私に伝えたくてウズウズしてるのが、手に取るようにわかった。
90%の優越感と、10%の罪悪感。
一番仲良しの親友との間に、秘密をつくるなんてできないから…という言い訳。
『つきあうことになっちゃったんだ、私たち』
突きつけられた宣告。もしくは、誇らしげな宣言。
『…本当?そっか、すごい。やったね、良かったね』
そんな祝福の言葉を、私はどんな顔して伝えたんだろう。
ちゃんと笑って言えてたんだろうか?…覚えてない。
その晩、家に帰って、部屋のベッドで頭から布団かぶって号泣したことしか、覚えてない。
あの人が選んだのは、私じゃなかった。
私の知らないところで、二人の間に一体どんなことが起こってたんだろう…。
〝好きなんだ。つき合おうよ〟
あの人が、そう告げたんだろうか?
どんな表情で?優しい笑顔で?
想像しようとして、苦しくなってガシャン…頭の中でガラスの割れる音。
不意に、脳裏に現れた透明の仕切り板。
それを粉々にバキバキに…木っ端みじんに踏み砕くと、目の前が暗転して、どす黒い暗闇の中に、心と体がずぶずぶ沈んでいった。
嫉妬、というのだろうか。もしかしたら、こんな感情を。
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