第3章

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「違うよ。あっちを見て」  私はキッチンにいるGの方を指差した。Gは千鳥足で、また空き缶の方に戻っていた。あんた2杯目いくの?昼間から梯子酒なんていい加減にしなさい!そんなに足もふらついてるのに呑み過ぎでしょう。  そう思って見ていたら大河は驚きの言葉を発した。 「なんだ、ギータかぁ」  私はG……ギータから大河へゆっくりと視線を移した。今、何と言った?ソフトバン○ホークスファンの全員を敵に回したな?これであなたはもう福岡には住めなくなったよ。  それよりギータって名前を付けて飼っているなんて!ゴミ屋敷だけでなくギータも飼育してるとは、私のキャパを遥かに超えてしまった。 「ギータって、もしかして飼ってるの?」  私は答えに依っては別れようと思い、大河を見ながら怖々と聞いてみた。 「飼うわけないじゃん。冗談だよ」  大河は玄関に行き、片足だけ靴を履くとキッチンへ戻りギータを踏み潰した。ギータは酔っ払いすぎて逃げることもなく呆気なく最期を迎えた。  酒は呑んでも呑まれるなって標語はGにも通用するらしい。  大河はギータの亡骸を去年の2月に有効期限が切れたピザの広告に包んでゴミの山に載せた。もちろん転がり落ちそうになったが、あの突き刺さった写真に引っかかって下に落ちなかった。大河の人生が詰まった壮絶なゴミ箱だな…… 「ご飯を食べに行こう」  大河は靴を履いたまま、靴の裏をティッシュで拭いた後、そのティッシュをシンクにポンと置くと部屋に入って着替えをはじめた。  昨夜、靴を脱ぐように言ったのに、その本人が靴を履いたまま上がってるじゃない!流石にチノパンを履くときは靴を脱いでいたが。それよりそのティッシュをゴミ箱に捨てて!手も洗って!
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