第3章

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 今日明日で全て変われるはずがなかった。大河も私も……  昨日まで大切に、それこそ肌身離さず身に付けるように持っていたプリクラをゴミと思うなんて私には無理だ。でも忘れるための努力なんだ。一歩先に進むための。  光が先輩も前に進んでいると言ってたのを思い出した。先輩に彼女らしき人が出来たと言っていた。就活はしていないようだったが……  私も先に進むんだ。いつまでも先輩との思い出にしがみついてはいけない。一人では無理でも大河と一緒だったら進める気がした。でもこのイベントのパンフレットと、ゴミの山に突き刺さった写真と大河にとって何が違うんだろう。  自分が言った現地調達という言葉に足掻いていた。写真に写っている人と私は違うと思っていた。もっと大切にされていると思い込んでいた。たった1日しか付き合ってないのにも関わらず。  思い上がりも甚だしい。写真とパンフレットの扱いに差はないように感じた。だからと言って大河を責めることは出来ない。私自身もゴミの中からプリクラの欠片を探して握り締めるくらいなんだから。  こんなちっぽけなことに執着している自分に嫌気がさした。  昨日の素敵な食事と、好きだとか可愛いとかの言葉と、慣れた大人のキスと、人生初の渡された鍵に舞い上がっていただけなんじゃないだろうか。今1度冷静になろう。 「帰る」そう言って私はパンフレットを畳みながら後ろでゲームをしている大河に声をかけた。 「えー、なんで?まだ早いだろう。あっ、もしかして、手伝わないから怒った?」と、私の気も知らないで大河はコントローラーを置いて起き上がろうとした。
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