第3章

13/38
前へ
/281ページ
次へ
 翌日の日曜日、午前中はいつも通り音楽を聴きながら片付けをしていた。母と掛け布団を2階のベランダで干していると幼なじみのみっちが家の前を通った。 「マナー、暇なの?今からバーベキューするから来ない?」  道端から大声で誘われた。 「えー、急に行ったら迷惑でしょ?」  私が笑いながら断ると「違う違う。お母さんがマナも誘ったらって言ったの。おばちゃん、マナ借りるよ」と言った。  母も笑いながら「いいわよ。布団を入れたいから食べ終わったら返してね」と、今日の私の予定は2人に決められた。  みっちはコンビニでペットボトルの烏龍茶を買うと言うので、戻る時に私と合流することになった。1階へ戻り、母からみかんやらごちゃごちゃと受け取って、しばらくして飲み物を抱えたみっちと家に行った。  みっちの家は“人生相談”という謎の喫茶店を営んでおり、みっちの母は自称料理研究家でニックネームがまだむチッチと言い、喫茶店が休みの日に自宅や公民館で料理教室を開いていた。  そのレシピの研究で毎回作り過ぎたと言っては急に呼ばれ、ミナがいた時は2人で毎週のように通っていた。最近はあまりなかったのだが、急に呼び出すところは相変わらずだった。  みっちの家族とバーベキューと言う名の何を焼いたら美味しいかと言う実験中にスマホに連絡がきた。急いで見ると 「今帰ってきたよ」と大河からの連絡だった。返事も面倒くさく、スマホを投げやった。既読はついてるはずだからいいや。 「マナちゃん、いい?」まだむチッチが笑顔で私の顔を覗き込んだ。 「いいですよ」 「それじゃ、来週だけどすずちゃんの誕生日パーティーのスペシャル料理をお母さんと取りに来て」 「いいですよ」 「それから日曜も飛びっきりゴージャスな試作を作るから来てね」  大河とは会う約束はしていない私は日曜日も快諾した。  結局、帰宅後は布団を取り入れた後に母と食材を買いに出掛け、普段と変わらず日曜日は終わった。  そしてその後しばらく大河からは連絡が途絶えた。
/281ページ

最初のコメントを投稿しよう!

169人が本棚に入れています
本棚に追加