第3章

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「ダメですよ。また汚い部屋だったらもう2度と行きませんよ」 「分かったよ。掃除するよ。マナちゃんの為だからね」  自分の部屋の掃除を私の為なんてよく言うわ……  そう思いながらも、掃除を全くしない大河が私の為にと今日掃除をしたと話してくれたことを思い出し少しだけ温かい気持ちになった。仕方ないなぁ…… 「毎日連絡します。時間が合えば通話も出来るので、綺麗にして下さいね」 「もう分かってるよ。マナちゃんこそ、今、付き合ってるの僕だからね。元彼と間違って自慢しないように」  さっき、学園祭で2年連続ミスターだったと言ったことを根に持ってるな。 「鬼木さんも格好いいですよ」そう言うと「も?」と、大河は不服そうに眉をひそめた。 「あっ、鬼木さんの方が格好いいです」と、私が慌てて言い直すと「うん、これから毎日言おうか」と満面の笑みを浮かべて大河は言った。怖ろしい……  やがて信号が青に変わり、車は緩やかに発車した。  次に会うのは12月かぁ。久しく恋愛を休んでいた私にはこれくらいがちょうどいいのかもしれない。  只、相手が得体の知れない大河だということだけで……  どうして私は好きだと思ったんだろう。好きと言われたから好きになったのかなぁ。  それよりどうして大河が私のことが好きなのか不思議だった。  極普通で取り柄なんてないのに……  決定的な何かあればいいのかな……  あぁ、私には好きって感情を論破することなんて出来ないだろう。  運転している大河に視線を向けた。  それに気が付いたらしく、ずっと繋いでいたままの大河の左手は強く私の手を握りしめた。
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