第3章

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「すーずぅー。このおじさんね、鬼木さんって名前なの。鬼木さんって、言ってみて。お・に・き・さ・ん」 「おにっちぃたん!」と、すずは元気よく言った。 「お兄ちゃんかぁ。すずちゃんはいい子だなぁ。そうだよね。おじさんじゃないよね。 マナお姉ちゃんは僕のことおじさんって言うんだよ。酷いよね。すずちゃん、ねぇ、もう1度お兄ちゃんって言って」  大河に懐いたすずはその後、何度も「おにちぃたん」と繰り返し言い、最後の方は「おにいたん」と変わり、ぴょんぴょんと飛びながら言っては大河を喜ばせた。  私より大河の方が単純で簡単じゃないか。あぁ、おじさんと言わせたかったのに失敗した。  私がムッとしていたのか、大河が私の傍へ寄って「拗ねたマナちゃんも可愛いなぁ」と抱きしめた。 「嫌、やめて。恥ずかしい」と、私が振り解くと、策さんの父の米蔵と母のmocoと目が合った。米蔵がmocoにまるで吸い寄せられるように移動した。  その瞬間、策さんが「今は止めろよ!鬼木さんが来ているだし」と大きな声で2人に言った。  米蔵が残念そうに「ちっ」と軽く舌打ちをした。その様子を不思議そうに大河が見ていた。 ……………………  そろそろ誕生日パーティーも終わりに近づい時だった。  ミナが爆弾発言をした。 「今日はすずの為にありがとうございました! まだまだ幼いすずですが、来年の夏にはお姉さんになる予定です。 これからも親子共々宜しくお願いします」  その瞬間、策さんが立ち上がった。 「マジっ?うわー!やべー。何、このサプライズ!凄く嬉しいんだけど。ありがとう」  策さんは喜びのあまり混乱している風だった。  すずを抱き締め「お姉ちゃんだってよ、お姉ちゃん!すず姉ちゃん!」と頭をグリグリと押し付けたが、感動が分からないすずは迷惑そうだった。
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