第3章

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 翌日、私は幼なじみのみっちの母のまだむチッチの料理教室の試作を食べに行った。  玄関で靴を履いている時だった。  母から「昨日はごめんね。お父さんが呑んじゃったから」と謝られた。  昨日、すずの誕生日パーティーの後、解散になったのだが、父が飲酒していた為に私が運転して帰ったのだった。  母から「鬼っちと2人にさせてあげたかった」と言われたが、寧ろ2人にならなくて良かったとさえ思っていた。  あの後大河が近くのコインパーキングに停めたと言うので、そこまでは見送りに行った。  大河が乗車し窓ガラスがゆっくりと下がった。 「今日はびっくりしました。でも会えて嬉しかったです」と言いながら私は車内を見た。  助手席の足元にあのパンフレットが落ちたままになっていた。よく見ると白く点々と筋が浮かび上がっていた。  クーラーボックスに入っていた干からびて洗ってない雑巾を濡らして拭いたのは一目瞭然だった。そう言えば、パンフレットを渡されたとき湿って波打っていたな。しかもまだ落ちたまま拾われてもいないなんて。一層のこと捨ててくれればいいのに。あー、この人は掃除が出来ないんだった。私が捨てれば済む話なんだろうけど。  何とも言えないモヤモヤとした気持ちで「次は12月ですね。じゃ、また」と、それだけ言って走るように来た道を戻った……  忘れたかった事を思い出して少しばかり気持ちがざわついたが「家族でドライブでもしたい気分だったから、良かった。すずもご機嫌だったし楽しかったね」と、母にそう言って家を出た。
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