第3章

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 当たりの餃子は想像通り不味かった。  飲み込めないくらい不味くはなかったが、外れの餃子は小籠包かと思うくらいジューシーなのに、敢えて不味くする理由が分からなかった。  “人生相談”のまだむチッチの手作りのランチはどれも美味しいのに…… 「“人生相談”のオムライス美味しいのにしないの?ずっとインパクトある料理ばかりでし……」  空気を読んで控えめに私は言った。 「そうなのよ!今はインパクトがないと来てくれないからねぇ」  そういうもんなんだ。  そしてふと4月のメニューを思い出した。高校3年の男子のお母さんって、それってまだむチッチ本人じゃないか。それではキャラ弁を持っていくのは……ぴよ? (ちなみにどうでもいい事だけど、チッチ、みっち、鬼っち、菊池っち、ぴよとニックネームを付けたのは私の母である。 ぴよの本名は(うぐいす)と生まれると書いて(おう)(せい)と言う。 ホーホケキョがニックネームじゃなくて良かった) 「ぴよ、あなたキャラ弁は大丈夫なの?」 身長は180センチを超え、どこから見てもぴよのニックネームは似つかわしくなかったが、私は今でも昔の呼び方のままだった。 「あー、食えればいいよ。それに部活の遠征で家にほとんど居ないし、姉ちゃんみたいに週末の実験台になれないから、これくらいは貢献するよ」  ぴよは餃子を2つずつ頬張りながら言った。  どうやったら、こんな優しい子に育つんだ? 「今日は部活は休みなんだ?」 「あ、嫌、そうじゃないけど……怪我して……」  ぴよは私から目を逸らしてご飯を頬張った。私はそれ以上ぴよに訊けなかった。
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