第3章

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「マナちゃんが食べたくて作り方を知りたいのって何?」  まだむチッチがいきなり訊ねてきた。  私が食べたいの?すぐにいくつか頭に浮かんだが、それらはいつでも母が作ってくれるからあまり作りたいと思わなかった。  それよりも大河に作ってあげたいなぁ……  大河に食べてもらいたいもの?何を美味しそうに食べてたかなぁ?  シークレットツアーの朝食に新米の炊きたてを大口を開けて食べている様子が思い浮かんだ。白米に合うおかずは何だろう?  おかずではないが、大河の母の綾が作った漬け物はどれも美味しかった。 「お漬け物とか?」と、考えながら私は言った。 「お漬け物!あー、ピクルスね。これでやっと、決まったわ。 12月のメニューは “ロシアンルーレット・ミートボール、里芋豆乳なんちゃってグラタン、爽やかピクルス、デザートはびっくり善哉” の4つで、これで決定ね!」  まだむチッチはクルクルと廻るよう踊りながらエプロンを外し自分の世界に入っていった。  今、私達の口の中に入っている餃子は何なんだ?まさか使われないままお蔵入り?もしかして、私ったら地雷を踏んだの? 「ごめんなさい……」  小さな声でみんなに謝ると「いつもの事だし、餃子も来年のメニューになるから気にしなくていいよ。でも急にお漬け物ってどうして?」とみっちから質問された。  昨日のことでモヤモヤして忘れたいはずなのに、ふっとした瞬間に大河のことを考えてしまっている自分が恥ずかしくて、私は答えられなかった。
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