第3章

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 私は尽くす女では決してないが、それでもこうして今のように何かの拍子で相手の為に考える時間が増えていくのを感じた。  沢山の試作品を貰って、みっちの家からから帰宅し、母と1週間分の家事をこなし、家族3人で夕飯を食べ終え、入浴後部屋で寛いでいる時に大河から連絡が入った。 「連絡がくるかと待ってたんだけど。夕飯は一緒に食べたかったな」 私は既読するとすぐに返信した。 「今日の夕飯のメインは貰い物で改良の余地ありな里芋豆乳グラタンで、あとは家で作った味噌汁と酢の物。 鬼木さんは何を食べたの?」  すぐに返事がきた。 「うまそうだな。僕は家の横の定食屋のカツ丼」  あー、やっぱり大河は丼のご飯が似合う。  最初に招待してくれたレストランで余裕があるように演じていた大河を見て、くすぐったくなったのを思い出し、1人クスリと笑った。  この後、少し通話してこの日は終わった。「鬼木さんって格好いい」と何度も言わされたのは言うまでもない……  11月は起床後と就寝前に挨拶をし(あらかたはスタンプのみ)、時間があれば通話をする毎日だった。(通話の最後は毎回「鬼木さんって格好いい」と挨拶のように言わされた)  日曜日は旅行のお土産を貰ったり、反対にあげたりと、夕方のほんの僅かでも時間を作って、駅前で会って食事をしたりした。 (貰ったお土産を見た瞬間、私が固まったのは言うまでもない……)  私が今まで思い描いた恋愛とは程遠かったが、これはこれでいいのだと納得していた。
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