第4章

6/106
前へ
/281ページ
次へ
「あのさ、2月の出雲大社旅行はどうすんの? マナはリーダーがいるから行かないの? それとも綺麗にすっぱりあっさりざっくり見事に爽やかに鮮やかに思い残すこと無くしかも面倒くさくなく且つ後腐れ無く完璧に忘れる為に新しい出会いを祈願しに行くの?」 国語のテストでどれが形容詞か品詞か副詞か他にも出そうな勢いでおどけながら千春は言った。 「もちろん行くよ。 今は別れる方向で考えてるから、新しい出会いって言うか、もっと運命的な出会いがあるかもしれないし。 最悪、2週間前までにキャンセルすれば無料だしね で、千春……その言い回し何?」 「企業に色々応募しようと思って勉強してるんだけど、文章を書くのって難しくて…… まぁいいや、マナの新しい出会いに乾杯しよう」 私と千春はカクテルとコーヒーカップをコツンと合わせた。 それしても千春はどこに向かって勉強してるのだろう? 「……無理しなくていいよ」 急に櫻子が呟くように言った。 櫻子の家は旧家で400年くらい前でも簡単に遡ることが出来、図書館にある県の歴史編纂にも載っていた。 「待つのもありだよ」 櫻子自身が誰かを待っているように言った。 しかし、待っても来ないのかもしれない…… でも待つしかない…… そんな、空気だった。 ただ……あの櫻子だから似合わない…… サンマの蒲焼きの缶詰めを空けながら待っていそうだった。 ……ん?あれ? でもそんな人がいたら出雲大社旅行に櫻子は行かなくてい良いよね? 「おーい、櫻子さん?」 私が声をかけると舌を出して「私が待ってるのはガチャの無料イベントだよ」と櫻子は笑った。 そして櫻子は「拙者、戦国にハマったでござるよ」と付け加えた。 古風は関係ないじゃん!
/281ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加