ちょこっと休憩(side 大河)

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11月吉日…… 仕事帰りに高嶋君の家に寄った。 その2~3日前にマナちゃんと食事に行き、半ば強引に付き合うように仕向たばかりだったが、それにしても彼女は今までの女性と勝手が違い過ぎた。 マナちゃんには過去の経験が全く通じない。 事前に高嶋君の奥さんから情報を仕入れてレストランまで予約して色々計画していたのだが、ことごとく玉砕された。 良い雰囲気の中で一気にこちらのペースに持ち込もうとしても、「ん?これ何が入ってるんだろう?」とか「隠し味に絶対柚胡椒が入ってますね」とか料理に夢中でこちらの話は一切聞いてなかった。 オシャレな話題を考えないのか? 「可愛いね」と言ったら「そうですね。このトマトの可愛いさは半端ないですね」と返され、「マナちゃんが可愛いよ」と言っても「えっ、食べこぼしが付いてますか?ヤダ、すずみたい」と咳き込みながら口の周りをペーパーで拭きはじめるし…… 恋愛話に持っていくのを諦め「あー、そうだね。七味胡椒かもね」と適当に相槌を打つと、「七味かー、柑橘系の皮も使ってたらその可能性もありますね」と食いついてきた。 何なんだよ、主婦か? マナちゃんの過去は高嶋夫婦から聞いて、ある程度は把握しているつもりだ。 マナちゃんは、俺……じゃなかった僕の過去の恋愛とか好きなタイプには興味ないのか? 「うわっ!これってエゴマ油ですよね?」 油の種類まで分かって嬉しそうに頬張ってる彼女を見ていると「今日は最後まで落とす」と決めていたのにどうでも良くなってしまった。 それでも自分の想いだけは伝えようと思い、マナちゃんと会った経緯を話してみた。 “私の事を見守って下さってありがとうございます”と社交辞令の1つくらい返すかと思ったら「私、完璧に忘れてました」と笑いながら言い、その後は「ちっさいなぁ」だとか「どMですか」言いたい放題だった。 ここまでは想定内だったが…… 極め付けの「味が分からなくなるから、黙ってもらえませんか?」だ! 「1人で食べると味気ない」と言って誘い出したが味わい過ぎだろう。 逆に会話のない食事は辛くないか? マナちゃんから喋らせようとデザートを大口で飲み込んだ。 「んー!」悶えるように目をつぶりスプーンを握り締め、この世にはプリンと自分しかいないような顔をした彼女を見るとイラっとしたが、やっぱり可愛くて今夜落とすと決めた。
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