第1章

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 私は凍えてかじかんだ手を手袋から外し、カバンからスマホを出した。  外したあとになってこの手袋がスマホ対応だったことを思い出して、軽く舌打ちをした。今更手袋をするのも体裁悪く、素手まま大河の連絡先の画面を出した。 「今、着いたけど……どうしたらいいですか?」  敬語とタメ語が混在するのは今の私達の距離感と思いながらそのまま送信した。 送信するや否や、すぐに受信音がなった。 「あがってきて。まだ鍵は開いてるから」  大河からの返信を見て、カバンにスマホを投げ入れて、割と新しい作りの階段を登り大河の部屋のドアを開けた。 「お邪魔します」  そう言いながら私は低めのヒールのパンプスを脱ぎ、部屋にあがった。  火気厳禁の1Kの部屋は冷たく、大河はまだコートを着たままでエアコンのリモコンを弄ってるところだった。  もちろんこの部屋にスリッパなどと気が利いたものがあるはずもなく、フローリングは氷のように冷たく、ストッキングしか履いてない私はすぐに奥のカーペットに向かった。 「エアコンとホットカーペットだけじゃ、流石にすぐには暖かくならないなぁ」  大河はリモコンの設定を終えると私と入れ替わるようにキッチンに行き冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、電気ポットに一気に注ぎ、スイッチを押しながら言った。 「あっ、コーヒーでいい?」  大河はマグカップを用意しながら、こちらを見ずに聞いた。 「うん、暖かいのが飲みたいと思ってました」  私もコートを着たまま、自分が座る場所を確保するべく、多趣味で物が溢れかえった大河の部屋を簡単に片付けながら答えた。
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