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「キャッ」
がしゃん。
小さな悲鳴が僕の時間を一瞬止めた。
声が聞こえた台所に駆けつけてみると、粉々になったワイングラスが沙織の足元に広がっていた。
「痛ー」
彼女の左足から出血しているのを確認すると、何も言わずに僕は救急セットを持ってきた。彼女の足元から余計なガラスを振り払い、リビングのソファに座らせる。丁寧に消毒をしながらガラスの破片が刺さっていないかを確認する。
「これだから、お前は・・・」
吐きかけた言葉を飲み込んだ。もう言う必要がないことに気がついたからだ。
「どーせ、ドジとか言うんでしょ」
予想通りの返答を彼女がした。
「でも、ありがと。手当てしてくれて」
照れくさそうに言葉をつぶやいた。この言葉は意外だった。
包帯を巻き終わると、彼女は立ち上がろうとした。僕は彼女の肩をそっと押し返した。
「いーから、座っとけ」
「でも、片付けしないと・・・・・・」
「俺がやっとくよ。ダンボールに詰めとけばいいんだろ」
「うん」
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