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のらりくらりと歩いていくと、どこともしれない場所に辿り着いていた。夜の夕闇が徐々に夕焼け空を浸食し空は黒とオレンジの二色が支配していた。
「何時までも変わらないのは思い出と凝り固まった考えだけだ」
何一つ変わらない街は私に苦い過去と初恋の人の面影を思い出させ、過去の私を呼び起こしてくる。作られた笑みは徐々に崩れていき今の私と昔の私が交差していく。
西日暮里へ歩いていく。歩いたことのない道はどこまでも続く道に見え、私の足はゆったりと帆を進めていく。
今の私と昔の私は別人である。歩きながら、それを改めて実感する。昔は情熱をたぎらせ、心を揺らしながら生きていた。今は情熱など消え失せ、過去の呪縛にとらわれ、偽りの性格を作り生きている。趣味でさえ、昔と違った趣味になっている。昔は将棋に情熱を燃やしていたが、今は野球観戦を趣味になっている。きっと、あの子が見たらその変貌ぶりに驚くだろう。
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