第1章 闇の中 神の光

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「…」 「…もう、朝か…」 8年前に自分で造ったベッドから身体を起こし、うーんと身を伸ばす。 ここ鍛治の街アゥスでは、朝早く起きることはもはや日常茶飯事、寝坊など考えもしない。 特にノワールは寝つきが悪く、少しの物音で起きてしまう敏感さでは熟睡などしたこともなかった。そのためなのかノワールはいつも目に隈があり、眠いわけではないのに眠そうに見える。 ともかく、アゥスで身を立てようと思うなら怠ける暇はない。ノワールは昨日と似たような今日を迎えるため、寝室から出て鍛冶場へ向かう。 日々をあっけらかんと過ごすタイプではないノワールは、昨日何か嫌なことがあったとか、明日は良いことがあるかもしれないとか、そんなことは考えない。ただ今を、つらつらと生きるのみである。 ノワールは街の東に、自分の店を構えている。そもそもはその店の主人のもとに奉公していたが、その主人は6年前に亡くなった。主人は独り者で、今のノワールのような男であった。いや、ノワールの性格の方が主人の影響を受けていると言ったところか。
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