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絶望した彼は世捨て人になろうと考えた。もう誰とも係わらず、独りで生きていこう。そのほうがこれ以上傷つかずにすむ。
そう決めた矢先のこと、一艘の舟が島に流れ着いた。それに乗っていたのはペットを連れた少年だった。
彼の目にはその姿が友好的なものに映った。もしかしたら初めての友だちになれるかもしれないと、淡い期待が胸にこみ上げた。
ところがそれはもろくも崩れ去った。
少年は何の前触れもなしに彼に襲い掛かってきたのだ。
不意を突かれて逃げ惑う彼を、少年は執拗に打ち据える。その形相はまさに鬼のようだった。
命ばかりはお助けを……声を枯らして土下座する彼に、少年は嫌悪に満ちた表情で言い放つ。
「ではその代わりに、金はもらっていくぞ」
少年は彼の家にたまっていた金を根こそぎ舟に積み込んだ。
遠ざかり行く舟の上で、少年は日の丸が描かれた扇子をこれ見よがしに広げた。その傍らで、ペットが三匹、喜びを体で表現する。
雉はくるりと宙返りをし、猿はキャッキャと手を鳴らし、犬は嬉しそうに尻尾を振っていた。
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