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12月18日。
リクのために用意されたその部屋は、クリスマス前の浮かれた下界を一望できる、見晴らしの良いスイートだった。
数分前に部屋を訪れた女が、銀ギツネの毛皮をソファの上に放り投げ、早くも我慢ならないと言った仕草で、リクのほうへ歩み寄ってきた。
腰まである豊かな髪と甘いフレグランスの香りを揺らしながら、リクの肩に手を回す。真紅のネイルの指先が、戯れるようにその頬を撫でた。
「ねえ、ミサキさん。この部屋、暑すぎない?」
「あなたが服を脱いでしまっても、寒くないように設定してあります」
「それはどうも。でもこういうのって、あなたの趣味じゃ無いんでしょ? 断っても良かったのに」
「いえ……」
「あの人の頼みは、断れない?」
「はい」
素直に頷くリクにクスリと笑いながら女はその指で、自分のではなく、リクのシャツのボタンを1つ外した。
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