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「ぐぅおおああああああぁぁあ!」
勇者の剣が魔王の肩口に突き刺さった。仲間である戦士や賢者たちが切り開いた千載一遇のチャンス。これを逃せば勝機はない。
「ぬおおおおおおおお!」
勇者は魔王の肩口から腰まで斜めに切り下ろした!
「がぁぁああああああぁあああ・・・あ・・・あ・・・」
魔王はゆっくりと崩れ落ち、ばたりと倒れた。
「終わった・・・」
勇者は肩で息をしている。
仲間と共に、魔王を倒すため長い旅をしてきた。その旅もようやく終わる。
「よくやりました、勇者よ・・・傷を癒しましょう・・・」
どこからともなく声が聞こえ、魔王殿に神の光が満ちる。倒れていた仲間が立ち上がり、勇者の下へ集まってきた。
「勝ったんだな」いつもは陽気な戦士が、いつになく重たい口調で言った。
「勝ったのね・・・」いつもは口ベタな賢者が、感慨深げに言った。
「ああ、勝ったんだ・・・帰ろう。故郷へ」
勇者一行が魔王の亡骸に背を向け、帰ろうとした、そのとき!
「待て・・・勇者よ・・・」
声を出したのは魔王だった。
「何だ?」咄嗟に剣を構える勇者。
「くくく・・・心配はいらん・・・我は滅ぶ・・・だが、滅ぶ前にお前に言っておくことがある・・・」
「?」
「我は10000年に1度蘇る・・・10000年に1度蘇り、勇者に倒されるのだ・・・」
「知っている。俺は神によって選ばれ、勇者になり、ここまで来て、お前を倒した!それがどうした!」
勇者がイライラしたように言った。
「これは神によってかけられた呪いなのだよ・・・」
「なんだと?」
「我は10000年に1度必ず蘇り、勇者に倒される。勇者はどんなことがあろうと勇者となり、我を倒す宿命を負っている。これは呪いなのだよ・・・」
「だから、それがどうしたというんだ!」
「わからんか・・・そこの賢者は理解しているようだが・・・?」
勇者が賢者の方を見る。
賢者は諦めたように喋り始めた。
「魔王が現れ、勇者によって倒されるという歴史が、永久に繰り返されるということです。たとえどんなに人が、勇者が、魔王が抵抗をしても無駄だということです」
「お前は前世の記憶がないだろうから能天気に私を倒しにやってきたが、我が勇者によって倒された回数は、すでに1000回を越えている・・・これが呪いでなくてなんだ・・・」
魔王の体が光に包まれ始めた。
「ま・・た・・・10000年後に・・・また・・・会お・・・う」
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