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「時々、遠鏡で地球の方を視るけど、人間での彼女はとても苦しそうだよ。色んなものに阻まれて、段々、夢回路で逢うのも難しくなってきている。」
「あれは色んなものが混じった星だからな。本来そこに在るべきじゃない存在も多くある。…地球に行くなら急いだ方がいいぜ。」
「何かあったのか?」
「ここ数日で監視者達の殆どかここに還ってきてる。救星者も見つけ出した星の遭難者達を急ピッチであの星から連れ出してきている。が、まだ全員じゃないはずだ。」
「そうか、ならあの噂は本当かもしれないな。」
「でも大丈夫か?彼女が本当は他の星の者だったとしても、今生きているあの星と此処じゃ何もかもが違いすぎるぜ。」
「そうだな。でも、後悔はしたくないんだ。
だから、全てが終わってしまう前に…。」
僕は真っ直ぐ向かった。
彼女のいる悲しい星へ。
『君が好きなんだ。
何よりもその心が。
愛して行きたいんだ、これからを、二人で…。』
「よぉ!お還り!間一髪だったんじゃないか?」
「まぁね。これでも異形の星々をそれなりに渡り歩いてきてるからね。」
少し過った記憶に苦笑いをする。
「さすがだねぇ~。で、どうやって連れ出したんだ?まさか、本当の事を?」
「いや、ただプロポーズしただけさ。
僕の傍にいて欲しいって。」
「くぁ~っ!やるね~!!やっぱマジになった男は違うわ!
ま、色々大変だろうが、幸せにしろよ!」
「勿論。」
そう言って、初めて見る景色の中で、とても自然に、綺麗な笑顔を魅せる彼女に僕は微笑む。
間もなく、あの星は最期の悲鳴をあげるだろう。
けれど、それを聞くことはきっとない。
その中に、彼女の声が重なることも。
恨まれるだろうか。
けれど、覚悟は決まっていたから。
此処は、遥か遠い星。
今は平和で穏やかな場所。
その先は、まだわからないけれども、
僕らは此処で歩いて行く。
二人で、幸せな、優しい世界を。
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