Silent Runaway

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「っ―――――――……」 それは、どれ程遠くからだろうか。 とても悲しくて激しい、なのにとても静かな叫び。 側にいる誰かには聞こえているのだろうか。 僕のいるこの場所からは、その姿だけでしかわからない。 それでも、目を反らすことは出来なかった。 僕は知っていたからだ。 彼女の、心からの笑顔を。 だからこそ今僕の目に映る、涙で痛むその姿が 、とても辛くて苦しい。 何時から、そんな風に傷付いていたのだろうか。 どうして、其処にいなければならないのか。 …また、笑って欲しい…。 自由な心のまま、優しい気持ちのまま。 そう、強く願った瞬間、僕は迷わず走り出していた。 「よぅ!珍しいじゃねぇか!」 突然の声に振り返ると、そこには親しい顔があった。 「あぁ、元気そうだな。」 「まぁな。で、どうしたんだ?」 「船を1つ頼みたいんだ。」 高くそびえ立つ一本の大きな透明の樹。 此処はこの星のターミナルで、彼はここの整備士だ。 「旅か?しかし久しぶりじゃないか?」 「少し、急用でね。」 「なんだ、訳ありみてぇだな。で、何処までだ?」 「地球だ。」 それを聞いたとたん、整備士は顔を曇らせた。 「地球?何でまたあんな所に…。」 「逢いたい人がいてね。」 「なんだ、恋人か?」 「いや、まだそうじゃない。」 「まだ、ってことはそのつもりってことか。」 「まぁね。」 僕は少し照れながら答えた。 「しかし、一体何時逢ったんだ?地球の人間に逢うなんて監視者達と救星者達ぐらいだろ?一般の星人が逢う機会なんてあるのか?」 「夢回路で交信があってね。」 「あぁ、あれか。それならほぼリアルで逢ってるようなもんだしな。姿も見えるし触れられるし。 だけどよく人間が来れたもんだな。あそこは俺達みたいな魂で存在する者には自由に使えるけど、人間にはリスクがあるだろ。」 「あぁ、だから正直驚いたよ。あんな風に出逢うなんて。」 「奇跡としか言えねぇな。」 「運命、とも思うよ。」 自然と出た言葉で、また彼女に想いを馳せる。 「おぉおぉ、あっついねぇ。ま、そんだけマジってことか。」 「あぁ。」 僕は遠い宇宙を見上げた。
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