第1章

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 実は彼女は、俺のことも怪しいと思っていたらしい。どういうことかというと、俺と変質者が共謀して、私を助けるふりをして私と親しくなろうという作戦なのではないか、と思っていたらしい。  俺は飲んでいたコーヒーを思わず吹いた。「そんなバカなことするか。まるで漫画の世界じゃないか」と俺は彼女に言った。彼女は「すみません」と顔を赤くして、照れながら謝った。  昨日、俺が、警察に届けたほうがいい、と言っていた時点で、その共謀説の疑いは晴れていたみたいだが。  それから、俺と彼女はちょくと連絡を取るようになった。事件のこととは関係なく、普通の日常あったことを話し合う間柄になった。そして俺は次第に彼女に惹かれていき、彼女に告白をし付き合うようになった。  彼女は優しくて面倒見が良かった。俺のアパートに来て、料理を作ってくれたり洗濯もしてくれた。俺はすっかり彼女の行為に甘えていた。  しばらくすると、俺たちは俺のアパートで半同棲生活を始めた。俺は彼女と一緒にいれることが嬉しかったし、楽しかった。本当に幸せだとも思っていた。  しかし、そんな幸せな同棲生活は3か月ほどだった。彼女が次第に本性を現しだしたのだ。  彼女の本性はヒステリックなうえ、俺のことを束縛する。  俺が友達と遊びに行くと言うと、なんで私より友達を選ぶの?と訊いてくる。毎回のようにヒステリックに訊いてくるので、俺はうんざりして彼女には無断で遊びに行く。すると携帯のほうに電話が掛かってくる。電話に出ると喧嘩になるので、俺は無視をする。すると彼女は何十回もひっきりなしに掛けてくる。  俺は彼女といることが次第に窮屈になり別れ話を切り出した。  「別れたい」  「別れたくない」  「別れる」  「別れない」  「もう、お前といると窮屈なんだよ。一人になりたい」  「嫌だ。もう束縛しない。性格も直す。だからもう一度やり直して」  彼女は泣きながら頼むから、俺はもう一度彼女とやり直してみることにする。  しかし彼女が大人しくなるのはしばらくの間だけだった。次第にまた俺を束縛し、ヒステリックに怒り出す。そのたびに俺たちは別れ話になる。  「もう、絶対に別れる」  「ごめんなさい。こんどこそ性格直すから」  「もう信じられない」  「あなたと別れるくらいなら、私死ぬ」
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