19人が本棚に入れています
本棚に追加
あぁあぁあぁあぁあぁぅあぁあぁあぁあァァァァァッッッッッ
力のない悲鳴だ。もはや虫の息だ。自分でもよく解っている。
「私」はもうすぐ消えてなくなるのだと。
緑の丘の上に白い家が建っている。
窓はあるのかないのか判らない。
ドアが一つあって、少し離れたところにいる男が、最後の文字をしまい込もうと、よいしょとばかりに文字を担ぎ上げている。
待ってくれ! しまわれては困る、しまわれては困るんだ!
「私」は叫びながら走り寄る。
と申されましても。
私はこれを生業にしていまして。このお役目をおおせつかったとき、
釘を刺されたのでございます。
どなたからの指示も受けてはならないと。
私は文字になった“声”をしまうだけ。
例外はございません。
しかし。
しかし、“それ”をしまわれては、「私」が消えてしまうのではないかと心配なんだ。
とても、とてもね。
ご覧、「私」がどれほど心配しているか、君にも見えるだろう?
「私」は心のドアを開けて、最後の文字をしまおうとしている男に見せる。
緑の丘の上に白い家が建っていて、窓はあるのかないのか判らない。
ドアが一つあって、少し離れたところに男が立っている。
最後の文字をしまい込もうと、じっと“それ”を見おろしている
「私」が大急ぎで駆け寄っている。
最初のコメントを投稿しよう!