白昼の悲鳴

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 権六は跡をたどります。溝は街道からあぜ道にそれ、土手を斜めに下って川原に続いていました。そして、その先にかごめをしている子供たちの姿がありました。真ん中で手で目隠しをしてしゃがみこんでいるのはお千代、その回りを村の子供たちが囲んでいます。文太、千代、太一、そして……。じぞう様が子供たちと一緒に輪を作るように立てられていました。権六はあわてて駆け寄ります。 『こらっ、お前たち、何をやっておる』  どなりつけた権六に、子供たちが口々に答えます。 『何って、かごめだよ』 『見てわかんないの』 『そんなことじゃない。じぞう様をこんな所へ持ってきたことを言っているんだ』  権六はじぞう様を調べました。背中に泥がべったりと付いています。土がむき出しになった溝はじぞう様の足元まで続いており、子供たちがじぞう様を倒して地面を運んで行ったのは明らかでした。 『こんな泥だらけにしてしまって』  権六は子供たちを叱りつけました。 『だってじぞう様が一緒に遊ぼうって言ったんだよ』 『だから地蔵堂から出してあげたのよ』 『本当だよ』  子供たちは悪びれることなく答えます。 『そんな訳があるか。じぞう様のバチが当たるぞ』  権六はじぞう様を抱え上げて川の中に運びました。川の水で泥を丁寧に洗い落とします。河原に上げて、手拭いを水気をきれいに拭いさってから地蔵堂に戻します。その様子を子供たちは後ろで見つめていました。 『二度とこんなことをするんじゃないぞ』  権六の言葉に、子供たちは一様に口をとがらせました。  そして、確かにバチが当たりました、でもそれは権六の考えていたのとは違ったものでした。
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