白昼の悲鳴

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「……と言うお話なんですよ」          すっかり話に聞き入っていた浅野は我に帰りました。皿の上に残ったままだったお饅頭をへらで切って口に運びます。 「うぐうぐ、不思議な、お話ですね」 「ええ」  店員は立ち上がって店の奥に視線を向けました。 「今では街道が商店街になり、地蔵堂もなくなってしまったので、そのおじぞう様をお店の中にお迎えしているんですよ。ご覧になられませんか?」 「は、はい」  浅野は店員について行きました。店の一番奥に石のおじぞう様が鎮座していました。大きさは60センチくらいで、車輪がついた木製の台座の上に乗せられています。ずんぐりした頭部の丸みを帯びたほっぺは先ほどのお饅頭によく似た形をしていました。お顔を見ると確かに右のほっぺがちょうど指で突かれたような形でへこんでいます。  くぼみに見とれていた浅野に店員が語りかけました。 「おじぞう様は、今でも不思議な力をお持ちなんですよ。ほんの少しだけですけどね」  彼女はいたずらっぽく微笑んだ。 「体験されてみませんか?」  店員に促されて浅野はおじぞう様の前に立ちました。 「手を伸ばして、おじぞう様の左のほっぺに触ってみてください」  台座に乗っているため、ちょうど手をまっすぐ伸ばした高さにおじぞう様のほほがありました。指先でおじぞう様のへこんでいない方のほっぺを触ると、ひんやりとして堅い感触がしました。 「じゃあ、一度手を引っ込めて、今度は目をつむって、くるりと一回まわってから触ってみてください。目は閉じたままで」  浅野は目を閉じ、その場で一回まわりました。まっすぐ手を伸ばします。指先がおじぞう様に触れました。前と同じあたりです。けれど……。 「ええっー」  指先は表面で止まりませんでした。かすかな反発があるがそのまま中にはいっていきます。 「ねっ、やわらかく感じるでしょ」  店員の声がすぐそばで聞こえました。  指で押すとほっぺはさらにへこみましたが、弾力を持って押し返してきます。ほのかな暖かさも感じられました。まるで子供のほっぺのような感触です。 「手を引っ込めてください……。さっきと反対方向に回ってもらって。はい、もう目を開けてもいいですよ」
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