白昼の悲鳴

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 浅野は目を開けました。目の前のおじぞう様の左のほっぺは元に戻っていて、へこんだ痕は残っていませんでした。 「不思議でしょ……。こうした不思議を多くの人に伝えようとして作られたのが、じぞう様のほっぺなんですよ」  浅野は首をかしげながらおじぞう様を見つめました。そして視線を自分の手に移し、先ほどの感触を思い出すように、にぎにぎと動かします。 「よろしければおみやげにいかがですか」  店員の声に、浅野は顔を上げます。すぐ前に微笑む彼女の姿がありました。ほっそりとした顔立ちのわりに豊かな体つきは着物では窮屈そうと思わせるものでした。魅力的な胸元のラインを見ているうちにふと思います。来店した時とちょっと違っている。あの時の衿元はもう少し……。 「あ……」  浅野は声を漏らしました。何か考え付いたことがあったのでしょう。 「どうかなされました?」  店員の声に浅野は慌てて応えます。 「い、いえ、何でも……。そ、そうですね。じゃあ、じぞう様のほっぺを十個、いや二十個ください」 「ありがとうございます。すぐお包みしますね」  店員は包装したじぞう様のほっぺを紙袋に入れて浅野に渡しました。  店を出た浅野は何度も振り向きながら帰って行きました。店員は限りない慈しみを込めた笑顔で彼を見送ったのでした。
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