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白昼の悲鳴
「うひゃあー」
昼下がりの商店街に悲鳴が響きました。通りを歩いていた買い物客や、商店の店員たちは、何が起こったのかと悲鳴がした方向に顔を向けます。人々の視線の先に一軒の和菓子屋がありました。軒下のショーケースには様々な和菓子が飾られ、その後ろは幅の狭い縦格子戸になっています。入口には大きな暖簾がかけられていました。悲鳴はその奥から聞こえて来たようです。
悲鳴の出所を知って、店員たちは興味を失ったようでした。肩をすくめ、仕事に戻ります。立ち止まっていた買い物客の一人が不思議に思って店員に声を掛けました。
「聞いたでしょ、さっきの悲鳴。何かあったんじゃあ……」
店員は顔を上げてにこにこと笑みを浮かべます。
「心配ないですよ、時々あるんですけど……」
暖簾の奥を見通すように通りの先の和菓子屋に目をやりました。
「初めてのお客さんが驚いたのでしょう。その……じぞう様のほっぺに」
「じぞうさまの、ほっぺ?」
「ええ、ここらの名物です。百聞は一見にしかずって言いますから、見て行かれたらどうですか」
店員は右手を伸ばし、和菓子屋の入口を指し示しました。
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