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そこには、美しい少女が立っていた。
薄い桜色のドレスを身にまとった少女は怯えたような表情を浮かべている。
その少女の恐怖にあわせるように頭上の王冠も冷たい光を放ちながら揺れ動く。
少女の視線の先には黒いローブを身にまとった男と白銀の鎧に身をまとった騎士がいた。
精悍な顔つきに筋肉質な長身は見るものに勇猛さと気高さを感じさせる。
騎士が少女に近づこうとすると、黒いローブを身にまとった男が立ちふさがる。
蒼白な顔面に埋め込まれたかのような巨大な眼球は鋭い眼光を騎士に放っている。
騎士は素早く近づくと手に持っている剣で男に斬りかかる。
騎士の渾身の一撃を男は軽々と杖で受け止め一振りすると、杖から雷が放たれる。
そこから騎士と男の激しい戦いがはじまる。
男の杖から放たれる火柱や雷を紙一重でかわしながら騎士が鋭く剣を振るう。
いつ終わるともない一進一退の攻防も一瞬の隙をついた騎士の一撃の前に男が倒れる。
騎士は肩で大きく呼吸をしながらも傷だらけの顔をあげ少女に近づく。
少女はそこで・・・
「ぎょえわあああ」
「姫うるさい」
埃っぽい部室に男子生徒の声が無常に響き渡る。
佐藤武(さとうたけし)は黒縁の眼鏡越しに相沢姫(あいざわひめ)を睨む。
「えぇぇぇ」
相沢姫が、不満たらたらの目で佐藤武を睨みつける。
「いや。いくらなんでもぎょえわあはないだろ。
何だよ、ぎょえわあって」
「だってさぁ。あたしが普段あげる悲鳴っていったらあんなんだよ?」
「なるほど・・・って嘘だろ」
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